補聴器と歩んだ30年【その2】
前回は、私が補聴器を使い始めた頃のことや、当時大きな悩みだった「ハウリング」について書きました。
今回は、その後どのように補聴器と付き合ってきたのか、もう少し振り返ってみたいと思います。
※本文中の補聴器の画像は、当時の状況をイメージしたものです。実際に使用していた製品とは異なる場合があります。
私にとって補聴器は「高い音との戦い」でした

当時の補聴器は、現在のデジタル補聴器とは違い、アナログ式が主流でした。
補聴器本体に付いている小さなつまみを精密ドライバーで回しながら、低い音、中くらいの音、高い音と、それぞれの出力を調整していました。
私自身の経験から言えば、補聴器との付き合いは、長い間「高い音との戦い」だったように思います。
私は感音難聴で、特に高い音の聞こえが悪く、携帯電話や固定電話の着信音、電子レンジなど、電子機器から出る高い音が聞き取りにくいことがあります。
当然、その聞こえにくい部分を補聴器で補おうとします。
ところが、高い音を聞こえるようにしようと出力を上げると、今度は「ピー、ピー」というハウリングが起きやすくなる。
「聞こえるようにしたい。でも上げればハウリングする」
当時の私にとって、これは本当に悩ましい問題でした。
最初の耳穴型を使わなくなった理由

最初に耳穴型補聴器を選んだのは、「できるだけ目立たないものがいい」という気持ちと、ハウリングを少しでも抑えたいという理由からでした。
しかし実際にはハウリングに悩まされ、結局、長く使うことなく装用をやめてしまいました。
今になって振り返れば、
「もっと何度もお店に通って、納得できるまで調整してもらえばよかった」
と思います。
ただ、30年ほど前は、少なくとも私が補聴器を購入した環境では、現在のように購入後も継続して調整を繰り返していくという考え方が、十分に浸透していなかったように思います。
私自身も「補聴器は買ったら終わり」という感覚に近く、購入後は自分でボリュームを上げ下げしながら、何とかやりくりしていました。
今、補聴器を販売する側になったからこそ、購入後の調整や継続的なサポートがどれほど大切なのかを実感しています。
片耳から両耳装用へ
その後、大学病院から紹介してもらった補聴器店を訪れ、シーメンスのBTE(耳掛け型)補聴器を両耳に装用することになりました。
私自身、片耳だけに補聴器を装用していた時期に、左右の聞こえのバランスの悪さや、片方の耳だけで聞こうとする疲れを感じていました。
お店のスタッフの方と相談し、医師からも両耳装用を勧められたことから、両耳に補聴器を装用することを選びました。
実際に自分で経験したからこそ、両耳で聞くことの意味を考える大きなきっかけになったと思います。
アナログからデジタルへ

私が耳掛け型補聴器を使い始めた頃は、補聴器がちょうどアナログからデジタルへと大きく変わろうとしていた時期でした。
それまで精密ドライバーで小さなつまみを回していた調整が、パソコンと補聴器を有線で接続して行うようになり、調整できる範囲も少しずつ広がっていきました。
「これで、もっと自分の聞こえに合わせられるのではないか」
そんな期待もありました。
ところが、当時はデジタル化したからといって、私が長年悩んできたハウリングが完全になくなるわけではありませんでした。
仕事をしている最中に突然、
「ピー、ピー」
と補聴器が鳴る。
周囲にも聞こえる音ですから、仕事中は特に気になりました。
デジタルになって調整の幅は広がった。それでも、まだ補聴器との「高い音との戦い」は続いていたのです。
イヤーモールドにも挑戦しました

ハウリング対策として、耳型を採取して作るイヤーモールドを使用したこともあります。
耳にしっかり合わせることで音漏れを抑え、ハウリングを減らそうと考えたのです。
ところが今度は、別の問題が出てきました。
自分の声が耳の中にこもり、自分が話す声が必要以上に大きく響いて感じられる「自声強調」です。
これがどうにも馴染めず、結局、私は通常の耳栓型へ戻しました。
これも今になって考えると、ベント(空気を通すための穴)の調整など、もう少し方法があったのではないかと思います。
当時の私は、そんなことを知りませんでした。
「合わないから仕方がない」
そう思って使うのを諦めたり、自分でボリュームを調整したりしながら、補聴器に自分を合わせていました。
しかし本来は逆だったのかもしれません。
自分が補聴器に合わせるのではなく、補聴器を自分の聞こえや生活に合わせていく。
30年近く補聴器を使い、そして今は補聴器を販売する仕事に携わるようになったからこそ、そう感じています。
補聴器は買って終わりではありません。
その人の聞こえ方や生活環境に合わせて、何度も調整しながら付き合っていくものです。
私自身が遠回りしてきた経験も、今ではお客様の補聴器選びや調整に向き合ううえで、大切な経験になっています。
続く
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