救急時の「聞こえにくい」に備える|補聴器を使う方とご家族へ
「急に具合が悪くなったとき、救急隊の質問を聞き取れるだろうか」。聞こえにくさがある方やご家族にとって、救急時のやり取りは心配なことの一つです。
また、「声でうまく説明できないときは、どう伝えればよいのか」と悩む方もいます。
そこで、補聴器の準備とあわせて備えを考えてみましょう。自分に合う伝え方と助けを呼ぶ方法を、普段のうちに確認しておくことが大切です。

救急時の聞こえにくさと、伝え方の難しさ
『日本聴力障害新聞』2026年11月1日号には、ある事例が紹介されています。交通事故でけがをしたろう者が、スマートフォンで症状を伝えたというものです。痛みなどのため、相手の口の動きを読み取ることが難しかったそうです。
また、救急車には意思疎通のための「SOSカード」がありました。しかし、本人に知られておらず、使われなかったことも取り上げられています。[1]
この事例から分かるのは、二つのことの大切さです。まず、伝える道具を用意すること。そして、その使い方を本人も支援する側も知っておくことです。
一方で、補聴器を使っていても、音声だけで十分に会話できるとは限りません。聞こえ方や分かりやすい方法には、個人差があります。そのため、音声、筆談、手話、文字や絵の指さしなど、本人に合う方法の確認が必要です。[2][3]
救急に備え、「どう伝えてほしいか」を紙とスマホに用意する
「耳が聞こえにくいです」と伝えるときは、説明の方法も一緒に示しましょう。そうすると、周囲も対応を考えやすくなります。例えば、筆談を希望する方なら、次のようなメモを用意できます。
耳が聞こえにくいです。
説明や質問は、短い文で書いて見せてください。
呼びかけるときは、正面から合図してください。

なお、これはメモの一例です。手話や指さしを希望する場合は、ご自身に合う内容に変えてください。また、文字を読む・書くことが難しい方もいます。つまり、筆談だけを前提にせず、使いやすい方法を本人と周囲で確認しましょう。
さらに、同じ内容をスマートフォンにも保存しておくと安心です。すぐに表示できるか、事前に試しておきましょう。加えて、紙のメモと筆記具も用意しておきましょう。電池切れや、スマートフォンを操作しづらいときの備えになります。
指さして伝える救急用コミュニケーションボードも選択肢に
文字やイラストを指さして、意思を伝えるコミュニケーションボードもあります。神奈川県は救急用などのボードを公開しており、印刷して利用できます。[2]
準備するときは、文字の大きさや内容をご本人が確認しましょう。そのうえで、指さしで伝えやすいかを試してみてください。新聞のSOSカードの事例と同じく、まず道具の存在を知ることが大切です。普段から触れておくことが、いざというときに使うための第一歩になります。
声で119番通報が難しい方は、NET119を確認
紙のメモやボードは、目の前にいる人とやり取りするための道具です。一方、消防に助けを求める手段も、別に確認しておきましょう。
NET119緊急通報システムは、聴覚・言語機能障害のある方のための通報手段です。音声での119番通報が難しい方が、スマートフォンなどから通報できます。状況は、文字のチャットで伝えられます。ただし、利用には事前登録が必要です。[4]
米子市・境港市・西伯郡・日野郡にお住まいの方向けには、案内が公開されています。公開しているのは、鳥取県西部広域行政管理組合消防局です。利用対象や登録手続きは、同消防局の指令課などに確認してください。[5]
なお、準備は普段のうちに行いましょう。緊急時は、道具をそろえるために通報を遅らせないことが大切です。声での通報が難しい場合は、近くの人に119番通報を頼みましょう。このように、その場で使える手段で助けを求めてください。
ご家族と一緒に確認したい、救急時の聞こえの備え
一度にすべてをそろえる必要はありません。まずは、いつも使うバッグや補聴器の保管場所を見てみましょう。そのうえで、次の点を確認してみてください。
| 準備・確認するもの | 確認するポイント |
|---|---|
| 伝え方のメモと筆記具 | 希望する伝え方を短い文で書き、紙とスマホの両方に用意する。 |
| 連絡先・医療情報 | 家族の連絡先やお薬手帳などを、提示できるようまとめる。 |
| 補聴器の備品 | 機種に合う電池・充電器と、保管ケースの置き場所を決める。 |
| ご家族との共有 | 伝え方・持ち物の場所・助けを呼ぶ方法を共有する。 |
付き添うご家族は、ご本人に向けて説明してもらえるよう支えましょう。そして、説明の内容を一緒に確認してください。例えば、短い文で一つずつ伝えてもらうと、ご本人もやり取りに参加しやすくなります。[3]
また、伝わりやすい方法の共有は、救急時だけのものではありません。普段の受診や窓口でのやり取りを考えるきっかけにもなります。
聞こえの備えを、日頃の点検から
「認定補聴器専門店」補聴器の店YONAGOでは、ご相談を承っています。日頃の聞こえや、補聴器の使い方についてもお気軽にどうぞ。また、点検の際には電池・充電器・保管ケースなどの備えも確認しましょう。
最後に、補聴器の状態を整えることと、伝え方を周囲と共有すること。その両方を、毎日の安心につなげていきましょう。
補聴器の店YONAGOへ日頃の聞こえ・補聴器について相談する
参考資料
- 一般財団法人全日本ろうあ連盟『日本聴力障害新聞』2026年11月1日発行、第923号、11面「救急時の意思疎通を支える SOSカード」。
- 神奈川県「コミュニケーションボード(救急用・医療機関用・災害用)」「救急用・医療機関用コミュニケーションボード 利用案内(PDF)」。
- 一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会「病院受診ガイドブック 2024年度版(PDF)」。
- 総務省消防庁「NET119緊急通報システム」。
- 鳥取県西部広域行政管理組合消防局「Net119緊急通報システムについて」。
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